三幕の殺人~Three Act Tragedy~

 この記事は、アガサ・クリスティの小説『三幕の殺人』のネタばれ☆を含んでいます。これから人生のどこかでクリスティの小説を読む予定のある方は、開かないようにお願いしますね

三幕の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
早川書房
アガサ クリスティー

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 さてさて、まずはハヤカワ文庫さんのあらすじ☆を写したいと思います♪(例によって手抜きww笑^^;)

 >>引退した俳優が主催するパーティで、老牧師が不可解な死を遂げた。数か月後、あるパーティの席上、俳優の友人の医師が同じ状況下で死亡した。俳優、美貌の娘、演劇パトロンの男らが事件に挑み、名探偵ポワロが彼らを真相へと導く。ポワロが心憎いまでの「助演ぶり」をみせる、三幕仕立ての推理劇場。


 この本を読んでいる間、ちょっと忙しかったせいか、いつもの「一気感☆」のようなものは実は若干低かったような気がしますwwいえ、すっっごく面白かったんですよ♪でももう最後のほう、あともう少しで犯人がわかるっていうところまで読んでも、ここからはもう一気だ!!みたいにならなかったっていう意味で、個人的には星4つか4.5っていうところかもしれません(^^;)
 ちなみに、出版されたのが1934年なので、ちょうどクリスティが作家としてノリにのりまくってる時代の一作だと思うんですけど――この本は当時出版後一年で一万部を売り上げたそうです。その前までにアガサが出版したうちのどの作品よりも最速にして最高の売り上げ部数を達成し、アガサはベストセラー作家としての地位を確立したのでした。
 さて、今回もまたクリスティの描く「お馬鹿さんなフツーの人たち☆」の好演が実に光っていたと思います♪
 まず、元俳優のチャールズ・カートライトさんはいい歳(確か55歳でしたっけ??)して若い娘に熱を上げているし、その友人のサタースウェイトさんは、観察眼の光る、温厚な性格のおじさんです。さらに、殺された牧師のスティーヴン・バビントンさんと医師のバーソロミュー・ストレンジさんは、本当によくいる理想の牧師さん像・お医者さん像そのまんま☆な方なんですよね。
 そして、そんな彼らが何故毒殺されねばならなかったのか――ここが、名探偵ポワロさんの今回の推理どころとなるわけです。
 んでもって、おもな容疑者となる人々が今回も多人数となっていて、女優のアンジェラ・サトクリッフ、劇作家のミス・ウィルズ、カートライトが熱を上げている娘(エッグ)の友人、オリヴァー・マンダーズ、デイカズ大尉夫妻などなど……ひとりひとりの人物描写が実にまた光っていたと思うんですよね。
 読み進んでいる読者の視点に立ってみれば、デイカズ夫妻などはまず真っ先に容疑から外されるわけですが(ようするに「絶対コイツらは脇役だな☆」っていう感じがいかにもするっていう・笑)、にも関わらず、もしかしたら彼らが犯人かもしれない動機っていうのもきちんと用意されてるんですよ。ここがまたクリスティのなんとも心憎いところです。
 そして女優のアンジェラ・サトクリッフはいかにも犯人でなさそうに見えるにも関わらず、これまで何度もクリスティの魔術に騙されてきている身としては、「もしかしたら彼女について何か意外な真実が最後のほうでわかるかも……☆」なんて思ってしまう。そして劇作家のウィルズは犯人ではなかったとしても、犯行に関する何かを明らかに知っていそうであり、オリヴァー・マンダーズ青年も、何かちょっとクサい感じがする――そんなわけで結局、「犯人はダレなの??」っていう感じで、最後の最後までまるっきりさっぱりわかりませんでした~!!!
 でも、個人的には本当に意外な人が犯人であったにも関わらず……そんなにびっくりはしなかったかな??という気がします(^^;)
 ただもう、アガサ・クリスティのプロット立てのうまさに舌を巻くばかりといったような感じで――ここでもまた人間に対する彼女の深い洞察の眼差しが実に光っていると思いました。
 たとえば、チャールズ・カートライトとエッグの恋愛ですが、ふたりは30歳ほど年齢が離れてるんですね。でも、読者としてはまあ、「カートライトさんは俳優さんで、昔は今以上にいい男だったんだろうし……お互い好きあってるんならいーんじゃない??」くらいの感覚で読み進みますよね。ところが、最後に彼が犯人だということがわかった途端に――ただの利己的で自己中心的な色に狂った(笑)男というように、評価がガタン☆と下がる。
 実際、こういうことって現実でもよくあるじゃないですか(^^;)
 最初に会った時には相手について何も知らないので、好感をもっていい評価を下しているんだけれど、その人の別の第二の顔が見えてきた時に……その欠点を許容できる場合、むしろそのことによってさらにその人が好きになる場合、さらに「それは我慢できないww」って思う場合と、色々ありますよね。
 カートライトさんの場合、なんといっても<殺人者>ですから、それはもう許すの許さないのっていう以前の問題だとは思うんですけど(^^;)
 でも、多くの読者さんはおそらく、ヒロインのエッグと情緒的に何やら問題のある若者、オリヴァー・マンダーズが最後にいい感じに納まって、「うんうん、やっぱり若い人は若い人同士☆」なんて思っちゃうんじゃないかな~なんて思います♪(とりあえずわたし自身はそうでした・笑)
 そして、最初のほうを読んでる時って、エッグがカートライトの気を惹くために毒殺を考えだしたんじゃないかっていう疑惑もあったりするわけで、最後にはむしろ逆にそのカートライトが犯人だっていうことで、ここにもまた意外性の種が蒔かれていたりするんですよね。
 さらに、バビントン氏、バーソロミュー氏に続いて殺されることになった、ミセス・ド・ラッシュブリッジャーの扱いも、「やっぱりうまいなあ、クリスティ!!」って惚れぼれしてしまいます。ラッシュブリッジャーなんて、いかにも思わせぶりな名前だから、これは絶対何かあるって思いますよね。ところが……っていうところがまた、クリスティ節がなんとも光っているところだと思うんですよ♪(^^)
 ――で、個人的に今回、どこに一番注目したかというと……ポワロさんがカードで家を組み立てているシーンですよ!!!なんだかまるっきりニアたんみたいじゃないですか!!!!

 >>「カードで家を組み立てるのは、脳細胞には非常に刺激になるのです。昔からのわたしの習慣です」

 このセリフは、ポワロさんが二十四時間考える時間をもらえれば事件を解決できると言ったあとのものなんですけど――彼が灰色の脳細胞のみによって事件を解決しようとする姿勢って、Lたんや二アたんにもすごく共通するものがありますよね??そして、事件解決後にサタースウェイトさんに「完璧な英語を話す時とそうでない時があるのは何故か」と聞かれて、彼はこう答えています。

 >>「ああ、なるほど。確かに、わたしは正確で、こなれた英語を話せます。しかしね、たどたどしい英語を話すのは、大変な強みなのです。人々はそういう相手を見下しますからね。ああ、外国人か、まともな英語も話せないのだ、とね。人々を恐れさせるのは、わたしのやり方ではありません――代わりに、わたしは人々の穏やかな嘲りを促します。それに、自慢もしますよ!イギリス人はよくこう言います、『尊大な奴は、あまり大したことがない』これはイギリス的なものの見方です。ちっとも真実ではりあません。そうやって、わたしは人々を油断させるのです」

 ……こういうところとか、ついLたんと重ね合わせてしまうんですよね~(^^;)いえ、ポワロさんって主語が<わたし>で、いつも敬語調で話してるから、時々「Lたんも同じこと言いそう」って、つい胸がトキめいちゃうんですよねww(笑)
 だって、Lたんも自分が人をどう見るかって実に冷静に分析してますよね??そしてライトくんのようなイケメン男子はもてるけれども、自分はいわゆるキモメンに属するであろう……なんて思ってそうなところに思わず胸キュン(爆ww)しちゃうわけですよ
 まあ、このへんはあくまでもわたし個人のクリスティの小説を読む、第三の楽しみといったところですが(笑)、この『三幕の殺人』の終わり方もまた、とてもいい感じだと思います♪
 バビントン牧師は、殺人の予行演習のようなもので運悪く死亡されたわけですが――それがもしかしたらサタースウェイトさんやポワロさん、あるいは他のなんの罪もない人である可能性もあったわけです。ここでもう、サタースウェイトさんとカートライトさんの友情も底が見えており、このあたりもなんとなく普段の人間関係で「あ~、あるよあるよ、こういうことってよく☆」って思ったりしちゃうんですよね(^^;)
 ちなみに今回は↑のハヤカワ文庫さんの表紙のとおり、お酒の中に毒が混ざっていたわけなんですけど……クリスティ自身はお酒と煙草って大嫌いだったらしいですね(いえ、使われた毒が今回ニコチンだったので

 ☆アガサ・クリスティの嫌いなもの
  群衆・騒音・ラジオ・映画・蓄音機・酒・煙草。

 ☆アガサ・クリスティの好きなもの
  太陽と海と花と旅行、料理・水泳・テニス・ピアノ・コンサート・読書、そしてもちろん旅行。

 これは『オリエント急行殺人事件』の新潮文庫版のあとがきで、訳者の蕗沢忠枝さんが書いておられるのを抜き書きさせていただきました
 ではでは、次は是非とも『エッジウェア卿の死』を読みたいと思ってます♪(^^)
 カナ★さん、いつもながらクリスティ情報をどうもありがとう~!! 

 


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この記事へのコメント

カナ★
2009年02月16日 22:20
こんばんは^^
うんうん、『3幕の殺人』がラスト一気に爽快感がないのはよく判りますよ(笑)淡々と終わっていくみたいな感じですよね(^_^;)クリスティの中期でそんなに良く売れた作品なんですね~どちらかと言うと繰り返し読んでも安心な佳作な感じです(笑)ラストの夫人の布石がもう一歩欲しかったような気がします(余りにも最後に出てしまったので)でもタイトルの付け方と、初めに主演?とかを書いているところが遊び心が効いてますよね♪
クリスティの「お馬鹿さんなフツーの人たち☆」に超納得です(≧∇≦)今の現代でも普通にいそうな人々ですよね、皆何かを隠し持っているみたいな!?
カナ★
2009年02月16日 22:26
後期のポアロシリーズの作品や他のはどちらかというと、現代の事件じゃなくて「過去の殺人事件」「回想の殺人」がテーマが多くてイマイチ盛り上がりに欠けるかも><(それはそれで味があったいいんですが(^_^;)

でもポアロとマープル最後の事件「カーテン」と「スリーピングマーダー」は中期に書かれていて、金庫に厳重保管後クリスティの死後に発表する予定だったみたいです(自分の死後、夫と娘さんが生活に困らないようにと)結局カーテンはクリスティの亡くなる1年前、スリーピングはその死後すぐに発表されて当時の反響は凄かったでしょうね(^_^;)人生までもプロットを立てているクリスティに驚きです><
あと、「死が最後にやってくる」は登場人物がインホテプやヤーモス ソベク カイト 等紀元前の異色なお話でまゆみさんが気に入りそうだと思いますよ♪
カナ★
2009年02月16日 22:27
読んで安心佳作(笑)としては他に、青列車の秘密 ポアロのクリスマス ゼロ時間へ(これバトル警視がでてて好きです 笑)初期のチムニーズ館の秘密→七つの時計(これも好き)読んで欲しい作品が一杯です(笑)勿論「エッジウェア卿の死」も名作ですが、全体的に冬のロンドンを思わす暗さですよ(^_^;)
2009年02月17日 00:43
 カナ★さん、こんばんは~!!(^^)
 あ、でもほんとに「三幕の殺人」は面白かったですよ~!!でも、あんまり緊迫感がないというか(^^;)、エッグとカートライトさんがうまくいきそうな雰囲気も手伝って、なんとなく犯人がもう誰でもいっか☆っていうような気持ちになってしまったのかもしれませんwwでもやっぱり最後は<悲劇>のようなものが待っていて、「やっぱりクリスティだぁぁ!!」なんて思ってしまいました♪
 そうですよね、何かこう芝居の中の殺人を見てるような安心感があったような……いえ、小説だって結局フィクションなんですけど(^^;)、「ナイルに死す」はやっぱり、自分もエジプトにいるような気にさせてくれる小説ですよね。そう考えるとやっぱり星4つか4.5くらいかな~なんて。。。
2009年02月17日 00:45
 後期のポワロさんの作品は、回想系のものが多いんですか~!!でも、自分的にはそういう枠組みのものを書くのってすごく難しいような気がするんですよ(>_<)あ゛あ゛……本当にまだまだいっぱい読みたい本がありすぎて、一体いつになったら全部読み終わるやらと思いつつ、その過程がやっぱり楽しみだったり♪(^^)
「カーテン」と「スリーピングマーダー」、スゴイですね~!!大抵は作家が死後に残す遺作と呼ばれるものって、大したことない場合が多いんですけど(一般的によくそう言いますよね^^;)、クリスティの場合は両方ともシリーズ中の傑作と呼ばれていると聞いています。早く読みたいな~と思いつつ、やっぱりそれは最後に残しておくべきだろう……って、今は思ってるんですよね(^^;)何かこうそこから読んでしまうのは、もったいないような気がして
「死が最後にやってくる」も要チェックしておきたいと思います!!♪
2009年02月17日 00:47
 あ、実はこの記事きのう書いてて、今日「エッジウェア卿の死」を借りるつもりで図書館へいったら(市内に月曜でも開いてるところがあるんですよ^^)、驚いたことにありませんでした!!
 アガサ・クリスティっていったら、作家として超有名人なので、各図書館に全シリーズ揃ってると普通思うじゃないですかwwでも意外とないんですよね(^^;)中央図書館には流石に全巻ハヤカワ文庫さんで勢揃いしてるんですけど……他の図書館の品揃えには、結構絶望することがあります
 んで、結局「秘密機関」を借りてきたものの、この本もまた閉架図書扱いらしく、司書さんに書庫から持ってきてもらったんですよ(^^;)閉館十分前くらいだったので、今借りないとクリスティを読む楽しみが一日なくなってしまうと思い、かなり焦りましたwwそれだけクリスティの書くものには麻薬のような常習性があるとさえ思ってます(笑)
2009年02月17日 00:50
 あ、実は今日いった図書館には「ポアロのクリスマス」、置いてありました!!でも季節的にクリスマス時期に読もうかなって思ったりしちゃったんですよねwwあと文庫でもうひとつあったのが「親指のうずき」……それなりに大きい図書館なのに、文庫で置いてあるクリスティ作品がこの二冊だけなんて、悲しすぎるような気がしましたww

 カナ★さんに「これ面白いですよ^^」って薦めてもらえると、本当にすごく助かります!!結構密林さんのレビューとか、アテになるようでならない(?)し、その他ネタばれのない感想記事とか読んでみても、感じ方の違いっていうのは大きいような気がしました(^^;)
「三幕の殺人」も、カートライトさんが執事のエリスになりすましてたあたりとか、「そりゃねえだろ!!」って思う人がいるのもわかる気はするんですよ
2009年02月17日 00:54
 でもわたし自身は「それを思いつく」クリスティが凄い!!って、ただひたすら敬愛してしまう感じなんですよね。流石はミステリーの女王!!って。でもそう思わない人がいるのもわからなくはないというか……昔火サス系のドラマで「アガサ・クリスティってわたし嫌いよ」みたいなセリフがあったのを覚えてるんですけど(^^;)、わたしはただひたすら無条件に彼女の作品が好き!!って思える自分が幸せだなって思ってます♪(^^)
 ではでは、また一作読み終わるごとに是非ぜひ話相手になってくださいね~!!
 それではまた~!!(^^)/

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