探偵L~人狼伝説殺人事件~(14)

 自分的にここから少し、中だるみっぽくなってるんじゃないかな~なんて思ったりしてますww
 いえ、ここと次とでコネリー警部が『誰がエヴァンズを殺したのか?』っていう捜査をしてるわけなんですけど――ちょっとLの出番がないので、まあつまんないかなと思います(^^;)
 でも謎解きについてはほとんど一気にLが解決してくれるので、そこまでいけばあっという間なんですよね。
 ただしその部分だけやったら長いので、たぶん例によって前・中・後篇みたいに分けることになるんじゃないかなって思ったり。。。
 自分的には推理小説読む時って、実はそんなに推理とかしないほうなので、本当に「誰が犯人なの!?」って思う人がいるのかどーかが、実際よくわかりませんでも一応このへんも整理しておいたほうがいいのかなあ。いえ、自分としてもあんまりうまい書き方じゃないな☆と思っているだけに(^^;)


   ☆ロスファイエ・ホテル殺人事件~誰がエヴァンズを殺したか?~

 ・ダン・エヴァンズ=体中滅多刺しにされて殺害される。総資産百万ドルを越える大金持ち(301号室)。

 ・ワインバーグ夫妻=エヴァンズと同じく、総資産が百万ドルを越える大金持ち(302号室)。

 ・ケビン・キンドレイ博士=考古学者(201号室)。

 ・ジェイムズ・シモンズ=キンドレイ博士の助手(202号室)。

 ・ドナルド・ウィルキンソン=賭博好きなトレジャーハンター(203号室)。

 ・ブライアン・コーエン=カナダ人の有名作曲家(204号室)。

 ・パトリック・エドウィン=元バウンティハンターのアメリカ人(205号室)。

 ・フレッド・ライリー=元大手自動車メーカーの重役(206号室)。

 ・ジム・キャストウェル=投資家。総資産が百万ドルを越える大金持ち(207号室)。

 ・フィリップ・ラシュモア=イギリス各地に葉巻とウィスキーの店を構えるオーナー(208号室)。

 ・マイケル・コネリー=209号室に居住する警部。

 ・ライアン・フェロー=210号室に居住する警視。

 ・ジョーンズ夫妻=夫の退職金を元手に、ヘッジファンドで巨額の富を手にした夫婦(102号室)。

 ・コリンズ夫妻=表向きはIT企業の大株主を名のっている夫婦(103号室)。


 ……まあ、当然といえば当然なんですけど、一階には17名、二階には20名宿泊客がいたって書いてあるとおり、二階にはまだ他に211~220号室というのが存在します。でも、建物の構造上、盗み聞きをした人間がいたとすれば、そちらのもう一方の棟の人間ではなかろうというのが基本的前提となっているものと思ってください。
 ようするに、そんな全員が全員三か月以上も同じホテルに宿泊してるってありえないので――211~220号室のお客さんはそんなに長期で宿泊しない場合が多いという振り分け方です。
 自分的に推理小説の書き方としてこれが正しいかどうかというのは疑問なんですけど(^^;)、最後にLが謎解きした時に読まれた方が「あ~、そゆことか~☆」みたいに思ってもらえたとしたら、それなりに成功したというように判断したいと思ってます
 なんにしても、クリスティの小説読んでて「おお、よく出来てるな~!!」って関心するのは、必要最低限読者さんに与えるべき情報は必ず与えた上で予想外の真犯人が最後に暴かれるっていうことだと思うんですけど……その点、やっぱり本家デスノの頭脳戦は本当に凄かったと思います。ノートのルールが絶対なので、一度デスノートをシャッフルしたら絶対にもう後戻りも変更もできない……⑬巻で大場先生も言ってたと思うんですけど、やっぱりそういう決断って作者としても相当ドキドキ☆ものだと思うんですよね(^^;)
 自分が書いてるものって、ただの趣味でやってるだけのものだからいいけど、やっぱりプロの方は「えへっ☆間違いちゃいました」じゃすまないので……だから、わりと書き手さんの気持ちとかになって、そこはそうするしかなかったんだ、きっと原作者もつらかったんだ……みたいに、わたしはわりと思いがちなほうなんですけど――ブリーチ☆はやっぱり、にも関わらず何故か色々言いたくなる漫画です(^^;)
 まあ、41巻読んでも、なるべく批判とかは本当はしたくないんですよww
 でもやっぱり少なくとももったいないなとは思う。主人公とヒロインがあれだけ株下がりまくった状態で放置されてるのもなんか、一護くんや織姫ちゃんが悪いんじゃなくて、やっぱり描き方に問題があると思ってしまうので……ウルたんにしてもそうなんですよね。ウルたんと織姫の心が通じあうあのシーンって、きちんとウルキオラっていう破面の内面をもう少し時間をかけて丁寧に描いていたら(藍染様との出会いとか、彼を絶対視する理由とか☆)――少年漫画誌に残る名シーンといってもよかったかもしれないのに、そういう部分とかも本当にもったいないと思う。
 う゛~ん、まあこれ以上書くとまた長くなってしまうので、続きはまた41巻を読んでから!!(笑)
 それではまた~!!(^^)/



       探偵L~人狼伝説殺人事件~(14)

          第13章

 マイケル・コネリー警部は、Lが書いてくれたメモを元に、まずはオドネル・ジョーンズ夫妻の部屋を訪ねることにした。
 ところが夫妻はすでにあらかた荷物をまとめてしまったあとで、マイケルが三か月前のことを聞いても「今はそれどころではない」と言い張り、一向記憶を遡らせようとする気配さえ、まるで見せなかったのである。
「そんな三か月も前のことなんて、思い出せるわけがないでしょ!」
 アリッサ・ジョーンズは大小様々な大きさの箱に、自分の大切な帽子やアクセサリー類をしまいこみながら、またマイケルには一体いくらするのか見当もつかないブランド服の衣装にカバーをかけながら、こうまくしたてた。
「殺人事件――殺人事件ですよ!あのエヴァンズさんという人は、きのうまであたしたちと気さくに仲良くお話されていた方なんです。きっとこの村にはまだ、血に飢えた殺人鬼がいるに違いないわ。あたしはもう一秒だって、こんな場所にいるのはごめんよ!」
 奇妙に矛盾して聞こえることだが、人を喰い殺す野犬と人間の殺人鬼を比べた場合、夫人の中でよりハザードレベルが高いのはおそらく後者ということなのだろう。
 まかり間違えば、いまだ捕えられていない野犬にある日村のどこかで喉笛を噛み切られていたかもしれないのに――ジョーンズ夫人の中でそのことはこれまで、あまり考慮に入れられた試しがないようだった。
 そしてマイケルがおずおずとそのことを口にすると、驚いたことに彼女は、荷造りする手を一瞬止めて、くるりと振り返るなりこう言ってのけたのだった。
「わたし、動物には好かれる質なんですの。わたしだけじゃなく、主人にしてもそうですわ。亡くなった方のことを悪く言うのはどうかと思いますけど、ヴォーモンさんってもともとあまり評判の良くない方だったのでしょ?二番目に殺された娘さんにしても、浮気な子だったっていうじゃありませんの。あの気の毒な郵便配達の人のことはわかりませんけどね――ま、なんにしても、野良犬でも野良猫でも、所詮は犬畜生と思えば、その残虐な本性が何かの拍子に目覚めてしまったのだろうとでも思って納得できますわ。でもねあなた、人間が自分と同じ人間を殺すだなんて――おお、想像するだにぞっとしてしまうわ!」
 ジョーンズ夫人は身の毛もよだつといったふうに自分の両肩を抱くと、「どいてちょうだい」とぞんざいに言い放ち、マイケルのこと突き飛ばさんばかりに大股で歩いていった。
 寝室のクローゼットを埋めていた衣装は空になり、夫人の準備が終わるのをグラスを傾けながら待っていたジョーンズ氏は、慌てて残りのワインをぐいっと飲みほしている。
「いきましょう、ダーリン。せっかくあなたの定年を待って、海外旅行へもいける余裕ができたっていうのに――こんなところで血に飢えた殺人鬼の斧や包丁なんかにつきあってられないわ」
 ホテルの白い制服を着たポーターたちが、ジョーンズ夫妻の荷物を次から次へと外に運びだしていく。その内のいくつかはフロントに預けられ、航空便で夫妻の自宅――ロンドンのケンジントンまで送られる手筈となっているようだった。
 フェロー警視もまた、エントランスのところでジョーンズ氏と粘り強く話をしていたようだが、彼は「自分はエヴァンズ氏の死とはまったく何も関係がない」とは言い張るばかりだった。
「ここへ来たのは、去年一度来てみて、とても快い方々とお知りあいになれたからですよ」と、彼は煙草を吸いながら言った。「ラシュモアさんには葉巻の楽しみ方を教えていただいたし、コリンズ夫妻にはカードゲームのコツを教えていただきました。わたしはこれまで、何十年も働きどおしで――ようやくこうして老後の生活を満喫できるようになったのに、殺しだのなんだの、そんな物騒なゴタゴタに巻きこまれるのは一切ごめんなんですよ」
 ショーンズ夫妻の言い分は確かにもっともではあったが、ライアンはふたりが車に乗りこむまで、なおもしつこく後ろをついて回っていた。
 マイケルにしても、結局夫人に三か月前のことを聞けずじまいのままであり、彼女のことをただ黙ってホテルの玄関口から見送るしかなかったのである。もっとも、ホテルの前庭でLとフェロー警視が交わしていた会話を耳にしてもいたので――その点についてはあまり失敗したと思ってはいなかったにせよ。
 マイケルはLが書いてくれたメモ用紙を取りだすと、次はレベッカ・ウォードに三か月前のことを聞こうと思い、フロントに立っていたジム・ファーガスンに彼女の居所を訊ねようとしたのだが――その時、マナーモードにしてある携帯が、ポケットの中でヴーヴーと二度震えたのだった。

『三か月前のあの日、ホテルのロビーは今日みたいに薔薇と潮の香りで満ちていました。もし誰かが「三か月前のことなぞ覚えていない」とあくまで言い張るようなら――そのことをヒントに思いだしてもらうようにしたら、いかがでしょうか』

(なるほどな)
 マイケルはLのありがたい助言に頷くと、メイド係のレベッカが今どこでなんの仕事をしているかを、フロント係のジムに聞いた。
「彼女なら、たった今出ていかれた、ジョーンズ夫妻の部屋を掃除してると思いますよ」
 そこでマイケルが再びジョーンズ夫妻の宿泊していた102号室へ戻ってみると、そこには業務用のサイクロン掃除機を床にかけているレベッカの姿があった。
「刑事さん、わたし今とっても忙しいんですけど」
 レベッカは怒ったようにムッツリとした顔のままでそう言った。
「掃除をしたり、リネン類を取り替えたりなんだりしなきゃいけないのは、何もこの部屋だけってわけじゃないし――しかも汗だくになってあれやこれや働かされた揚げ句、お給金もそんなにもらえるってわけじゃなし。あ、わたしの場合、ダイアナと違って通いじゃないから、住みこみの費用とか食費とか、色々引かれてしまうんですよ。その点、ヴォーモンさんの家はよかったなあ。あのおばさん、口はうるさいけど、お金にはしみったれたところはなかったから」
「ダイアナって、いつも君と一緒に組んで、ベッドメイクをしたりしてた、あの黒い髪の女の子?」
「ええ、そうなんです」と、レベッカは白いシーツを広げると、中心線をきっちり揃え、端の部分を三角形にし、それをベッドの下へたくしこんでいる。「こういうのも、ふたりでやったほうが本当は早いんですけど――あの子、三週間前に突然、この仕事やめちゃって。支配人のグレイヴスさんは町に求人広告をだしておいたっていうんですけど、こんな殺人事件まで起きてしまったんじゃ、新しい人なんて早々来るわけもないし」
「いや、わからないよ」見よう見真似で、ベッドメイクを手伝いながらマイケルは言った。「退屈な田舎暮らしに飽き飽きしてて、何か刺激のようなものを求めてる子が、勤め先として選ぶかもしれないじゃないか」
「だといいけど」
 レベッカはどこか中途半端にベッド下に押しこまれたシーツを見て――片手で額を押さえつつ、「あ~あ」とあからさまに大きな溜息を着いている。
「刑事さん、手伝ってくださるのは有難いけど、こんなんじゃ全然話になりませんよ。最後に副支配人のゴードンさんが最終的なチェックを色々なさるんですけど、これを見た瞬間にわたしが大目玉を食らいます。あの人、髪の毛がバスルームに一本落ちてたっていうだけでも――気の狂った潔癖症の人みたいに大騒ぎするんですから。ついでに時間にもうるさい人なんで、話があるなら休憩時間にでもしてもらえませんか?」
「う、うん、いいよ」
 マイケルは自分よりもずっと年下の女の子に気圧されて、そそくさと部屋から出ていくことにした。そして先にラシュモア氏と賞金稼ぎのパトリック・エドウィンに話を聞いたほうがよさそうだと思い――螺旋階段を二階へ上がっていくことにしたのだった。
 まずは、208号室のラシュモア氏から。
「まあどうぞ、刑事さん。葉巻でも一本いかがですかな?」
 オールバックの髪を、ポマードで光らせたフィリップ・ラシュモアは、アラン・ドロンやハンフリー・ボガート、あるいは『風と共に去りぬ』でレット・バトラーを演じたクラーク・ゲーブルのような――どこか一昔前のダンディな男を意識した風貌の男だった。
 気どった雰囲気の立ち居振る舞いが、あまりにも前時代的で、古き良き時代を生きた本物の紳士の生き残りといった感じもしたが、見方を変えたとしたらそれは、ただのうさんくさい山師のようにしか見えなかったといっていい。
「いえ、俺は葉巻どころか普段から煙草も吸いませんので」
「ほう、刑事さんにしては珍しいですな」
 ラシュモアはまるで、刑事という人種を熟知しているかのような口振りだったが、おそらくそれはTVドラマなどによくある刑事像を指しての発言なのだろうと、マイケルはそう解釈した。
「それで、わたしにお聞きになりたいことというのは?」
「今回の事件が起きる三か月前――正確には、六月十三日のことですが、その日の夕刻から夜にかけて、どこで何をしていたのかを教えていただきたいんです」
「三か月前の六月十三日?」と、あからさまに不審げに、ラシュモアは眉をひそめている。先ほど別のキーレンと名のる刑事に、エヴァンズが殺されたきのうの夜のアリバイについては話してあったので――今度は一体何を聞きにきたかと思えば、三か月も前の自分の行動についてとは。
「そう言われましても、すぐにパッとは思いだせませんな。大体、刑事さんにしてもそうでしょう?あなた、三日前の夜と四日前の夕方に何を食べたかなんて――すぐに思いだせますか?」
「ごもっともです」
 そこでマイケルは、Lから指示があったとおり、ホテルの庭の薔薇の匂いと潮の香りが混ざりあった夕べのことなのですが、と説明することにした。また六月十三日に前後して村で起きた小さな出来事やホテル内でのちょっとした人間関係の騒動のことなどを持ちだして――ラシュモアの記憶を正しく導こうとマイケルは務めた。
 そしてその結果として、ラシュモアは葉巻の煙をくゆらせつつ、数分瞑想するように目を閉じたあと、「思いだしました」と答えたのだった。
「あの日、わたしはホテルのカフェでエスプレッソを一杯飲んでから――そのあと、散歩へ出かけたんですよ。庭からの馨しい香気に誘われて、海辺のあたりを少しぶらぶらすることにしたんです。崖の上から眺める夕陽がとても美しくて、完全に陽が没してしまうまでその場所でぼんやりしていました。会社のほうの経営は息子に任せてあるんですが、そろそろロンドンへ戻ろうと思うたびに――そういう心を奪われる風景に出会ってしまい、帰るのを一週間延ばしにしているような次第でして」
「なるほど。ところでそれは、間違いなく三か月前の六月十三日のことなんですよね?」
「ええ、間違いありません」と、また少しの間目を閉じて、記憶を確認するようにしてから、ラシュモアは言った。
「ですが、わたしの三か月前の行動が、刑事さんにとってどんな意味を持っているというんです?」
「申し訳ありませんが、それは捜査上の機密に関わることですので、返答しかねます」
 マイケルはそう言ってごまかし、ラシュモアが本当に嘘をついていないかどうかとよく考えてみた。
 彼の部屋は208号室で、あの日の夜実は海岸へ散歩になど出ていなくて、フェロー警視と変てこ探偵ワイミーの話を盗み聞きしていたという可能性はゼロではない……そして人が来る気配を鋭く察知し、すぐに自室へ戻ったということは考えられないだろうか?
(ありえなくはない……)
 そう思いはしたものの、それでいてマイケルはラシュモアがまるで嘘をついていないようにも感じていた。何より、ピンクのチョッキに白いズボンなどという、見るからに気障な服装の目の前の彼が――人品卑しからぬ紳士といった風貌の彼が――ドアの前に泥棒よろしくピタリと張りついているところというのは、なんとなく想像しにくかった。
 とりあえずマイケルは、形式的にアリバイを調べてまわっているような振りをして、ラシュモアの部屋を辞去する
ことにする。
(次は、賞金稼ぎのパトリック・エドウィンか)
 もしエヴァンズを殺したとすれば、こいつが可能性的に一番高そうだ……マイケルはそう思いながら、彼が居室としている205号室――フェロー警視の部屋の真向かい――のドアをノックした。
 エドウィンは右腕に包帯を巻いて首から吊るしており、それは今朝方バスルームで足を滑らせ、骨折したことによるものだという話だった。
「やあ、刑事さん。一体これまた俺になんの用事だい?」
 パトリック・エドウィンは浅黒い顔に筋骨隆々とした体つきの、五十五歳にはとても見えない若々しい健康的な男だった。
「エヴァンズ殺しのことで、きのうのアリバイについてなら、他の刑事さんに全部話しておいたぜ……奴さん、どうもこの俺の怪我をうさんくさがってな、ダンと揉みあった時に出来たもんじゃねえかと疑っていたようだが――医者と鑑識の人間がふたりして、どの角度でどんなふうにしてる時に転んだかとか、色々詳しい話を聞いていったからな。次期、俺が嘘なんか言ってねえってことが証明されるだろうよ」
「俺が聞きたいのは、今から約三か月前の、六月十三日のことなんですがね」
 ベッドの背もたれによりかかり、TVのニュースを見ていたエドウィンは、リモコンで一度電源を切ると、さっきまで別の刑事が座っていたらしい椅子を、マイケルにも勧めた。
「三か月前の六月十三日か」と、エドウィンは顎鬚をかきながら、懸命に思いだそうと努めている様子だった。
「ちょいと刑事さん、悪いがそこにある茶色い革の手帳をとってくんねえか。俺は一日の予定ってもんを、そこに書きこんでおくことが多いんでな」
 マイケルが机の上に置かれた手帳をエドウィンに手渡すと――彼は左手をぺろりと舐めてつばをつけ、革表紙の手帳を何枚かめくっていた。そしてナイトスタンドの上に置かれた老眼鏡をかけ、ひとりで何かを納得するように何度も頷いている。
「この日はダンの奴とホテルのラウンジで飲んでたようだな。たぶん夜の十一時くらいのことだ」
「その前には何をしていましたか?」
 どこか油断のない目つきで自分のことを見返してくるマイケルに向かって、エドウィンは左手で手帳をひらひらさせて見せた。
「それ以外には特にこれといって何も書かれていないから――たぶん、部屋にいただろうな。あんたも知ってるかもしれねえが、俺はアメリカじゃあちょっとは名の知られた有名な賞金稼ぎなんだぜ。性犯罪者が誘拐した美少女を救出したことがあるし(この事件が俺のことを一躍有名にしたんだ)、一千万円の賞金が首にかかったFBIの指名手配犯を警察に引き渡したこともあれば――テロの下手人どもに手錠をかけてグアンタナモ行きにしてやったこともある……まあ、詳しくは俺が書いたこの自伝を読めってところだ」
 ガッハッハッと照れたようにがさつに笑いながら、エドウィンはテーブルの上に置かれた一冊の本――『傷だらけのバウンティハンター~あるハードボイルドな男の生きざま~』というタイトルの自著を指差している。
「実は今、その本の続編を執筆中でな、あんたの言う三か月前の六月十三日も、俺は机に向かって原稿を書いてたと思うんだ。俺は原稿を書く時、必ず日付と時間を入れる癖があるから――もしなんだったら、机の引きだしにしまってある、原稿の束を調べてみてくれ。そうすれば俺が部屋に閉じこもってたっていうことがはっきりわかるだろう」
 マイケルは一応念のために、黒い机の引きだしを調べてみることにした。自然と原稿に書かれた文章の数行が目に入ってしまい、まるでヘミングウェイを意識したような堅い文体に、マイケルはいささか驚いてしまう。
(顔に似合わずとは、まさにこのことだな……あるいは人を外見だけで判断するなかれといったところか)
 そこには、万年筆によって几帳面なくらい整った文字が若干右肩上がりに並んでおり――原稿を書きはじめた日付と時刻、それに書き終わった時刻とが、一章ごとに秒単位に至るまで書きこまれてあった。
(だが、気分転換にちょっと外へ出ようとして、その時に抑えがたい好奇心からフェロー警視の部屋のドアに耳をつけていた可能性はある……そして階段のほうから人の気配を感じて、また自分の部屋へ戻ったとしてもまったくおかしくはないだろう。そもそもこの原稿の日付と時刻自体、自作自演であるかもしれないことを思えば……)
「それで、三か月前の六月十三日の夜、亡くなったエヴァンズ氏と一体どんな話をしたか、覚えていますか?」
「あ~そうだな……」と、エドウィンは顎に手をやり、ちょっとの間何かを思いだすように、目を閉じてからこう言った。「その、ダンの奴はな、このホテルに宿泊してる連中の中では、俺が一番人間としてまともだと思うって、何かの拍子に言っていたんだ。あいつは俺が書いた本をきちんと隅から隅まで読んだ上で――出来るなら自分もこんな素晴らしい人生を送ってみたかったとか言っていてな……まあ、俺は四分の一くらいは世辞だろうと思って聞いていた。そしてそのうちに、去年のシーズン中ずっとこのホテルに宿泊してた奴らのことをひとりひとり奴は評論しはじめたんだよ。たとえばアリッサ・ジョーンズは亭主を尻に敷いた貞淑なあばずれだとか、ワインバーグ氏の妻は、実は自分のお下がりだとか、そんな話をな」
「お下がりっていうのは、どういう意味ですか?」
 刑事のくせに、まだそんなことも調べとらんのか、と言いたげに、エドウィンは左肩を軽く竦めている。
「ワインバーグ氏の妻のメリッサは、ダンの三番目の別れた女房なんだよ。といってもまあ、俺はそんな理由から彼女を疑うのはどうかと思うがね……あとコリンズ夫妻はカードゲームでいかさまをしてるから気をつけたまえと言われた覚えがあるよ。お互いに合図を決めておいて、額に手をやったらストレートフラッシュとか、喉に手をやったらスリーカードだとか――交替で時々休みながら、相手にバレないように適度に小銭を稼いでいるらしいんだな。まあ、俺も以前に一杯食わされた口だが、大した金額じゃなかったんで、それほど腹は立たなかったが」
「なるほど、エヴァンズ氏は他にも何か――というか、誰かのことをあなたに人物評として話していましたか?」
「そうだな……」
 顎鬚を手でこすりながら、エドウィンはさっき来た刑事よりも、この若い男のほうが事件の核心に最短距離で迫っていそうだと感じながら、空とぼけた様子で答える。
「その時はあまり気にしなかったんだが――なんでも、例の金塊の在処がわかったとか言って、引き上げるための資金を提供して欲しいと持ちかけられてるとか言ってたな。だが見せられた金の粒を専門家に鑑定してもらったところ、インターネットで小粒の金を買って少しそれっぽく加工しただけの代物だってことがわかったんで、俺にもそんな話は眉に唾をつけて引っ掛からないようにしろって言ってたっけな」
「それで、その詐欺話を持ちかけてきたのは、一体どこのどいつなんですか?」
「悪いが、それは聞きそびれちまったよ」
 エドウィンが冷蔵庫を指差し、左手で杯を傾けるような仕種をしたので――マイケルはそこからビールを一本とりだすと、リングプルを引き上げて、彼に手渡すことにした。
「ありがとうよ。ま、刑事さん、もし今回の殺人事件を無事解決できたら、その詳細について是非教えてくれ。本を書くのにちょうどいい、絶好のネタになるかもしれないからな」
 パトリック・エドウィンの部屋を訪ねる前までは――賞金稼ぎとして人を殺したこともある彼のことを、マイケルはもっともあやしいのではないかと感じていた。だが、一通り話を聞いてエドウィンの部屋を後にしてみると、彼はエヴァンズ殺しからもっとも遠いところにいるような気がしてならなかった。
 ワインバーグ氏の妻のメリッサがエヴァンズの別れた三番目の妻だったというのは驚きだが、この点についてはフェロー警視のほうですでに調べがついているだろう……そう思い、マイケルはもう一度一階へ下りると、今度はコリンズ夫妻のいる部屋――103号室を訪ねることにした。
 マイケルが部屋をノックした時、出てきたのは夫人のシンディで、彼女は前髪にパーマのかかった赤毛の頭を後ろに反らせると、まるで鶏のようにマイケルに対して威嚇のポーズをとっていた。
「一体、なんの御用ですの?きのうのアリバイについてなら、もうすでに別の刑事さんにお話しましたけど」
「いえ、俺が聞きたいのはそのことじゃありません」
 Lの書いたメモ用紙のことを思いだしつつ、マイケルは僅かに開いた扉に足の爪先をかけながら言った。今ではLひとりの推測ではなく――バウンティハンターのエドウィンからも裏付けをとってある事実について、マイケルは単刀直入に切りこむことにした。
「あなたたち御夫妻に、詐欺の容疑がかかっていることについて、お伺いしたいんです」
 声にこそ出さなかったが、(あなた)というように赤毛の女は後ろを振り返っていた。マーク・コリンズはただ黙って頷き、「その刑事さんをお通ししろ」と妻に対して小さな声で命じている。
「我々にかかっている嫌疑というのは、一体どんなことなんです?」
 コリンズは短く刈りこんだ金髪に、緑色の目をしていて――その薄緑の瞳が、どこか疑い深そうに、マイケルのことを見返していた。
 夫妻もエドウィンと同じく、TVでニュースを見ていたところらしく、ロスファイエ・ホテルの正面入口からレポーターが殺人事件について中継する姿を、リモコンのスイッチで一度消していた。
「カードゲームのことですよ」
 マイケルがいかにも余裕たっぷりに、何もかも知っている風を装ってそう言うと、意外にもコリンズはすぐに観念したようだった。
「人がひとり死んでいる以上――隠し立てしても仕方ありませんね。シンディ、金庫からあれを持ってきてくれ」
「マーク!」
 コリンズ夫人は夫のことを非難するように叫んでいたが、自分の夫が首を横に振っているのを見て――彼女もまた何かを諦めたようだった。
 各部屋には一つずつ、貴重品を保管するための備えつけの金庫があるのだが、シンディはそこから黒い革表紙の帳簿を取りだしていた。
 そして溜息を着きながら、しぶしぶといったようにそれをマイケルに手渡している。
「すみませんが、ついでに金庫の中をあらためさせてもらって構いませんか?」
「ええ、どうぞ。小切手帳とか、大したものは何もありませんがね」
 もしここに、小粒の金がいくたりかでもしまいこまれていたとしたら――例の金塊引き上げ話を持ちかけていたのはコリンズ夫妻ということになる……マイケルはそう期待しながら金庫の中を調べたが、そこには株券と小切手帳、それに少しばかりの現金がしまいこまれてあるばかりだった。
「僕と妻には、詐欺と窃盗の前科があります」と、マークはすぐにそう打ち明けた。「自分で言うのもなんですが、ようするに僕たちはそういう種類の小悪党なんですよ……人を殺すようなタイプの大犯罪者じゃない。だけど正直いって、あのエヴァンズの野郎が死んだと聞いた時には、ちょっとスッキリしたってのが本音ですね。何しろあの野郎は――」
「マーク!」
 またしてもシンディがたしなめるように叫んだので、コリンズは少しの間口を噤んでいた。
「それで、この帳簿は一体なんなんですか?」
 一日の収支の金額が並んでいるその下に、B・CとかF・RとかD・Wといったイニシャルが並んでいるのを見ながら、マイケルはそう聞いた。
「ようするに、カードゲームや賭けマージャン、ビリヤードなどで勝ったり負けたりした金額ですよ」と、マークは肩を竦めている。「あんまり勝ちすぎると不審がられますし、かといって負けすぎるというのでは、こちらも商売上がったりですから。毎日、誰に対していくら勝ったかとか、細かく金額を記録しておくんです。そして時には以前に大勝ちした相手に対して、ちょっとばかり負けてみたり……僕とシンディはそんなふうにしてここのホテル代や自分の衣服の費用なんかを稼いでました。あなたの前に来た刑事さんにも話しましたが、僕たちがIT企業の大株主だなんていうのは、まったくの大ウソですよ。まあ少額ながら株のほうもやっているのでね、適当に話の口裏を合わせるのは簡単なんです」
「それで、先ほどのエヴァンズ氏が死んで正直すっきりしたというお話ですが――」
 夫人がまたしてもたしなめるように夫のことを睨むのを見て、マイケルはこの夫婦の力関係のようなものを見てとっていた。
 ようするに、マークが主導権を握って詐欺などの計画を細かく立て、シンディのほうはそれに半盲目的に――惚れた弱味から――従っているのだろうと。
「シンディ、隠したって仕方がないよ」マークは自分の忠実な相棒に対して、親愛のサインを送るように微笑み、そして諦めの深い溜息を着いていた。「あの下種野郎は、カードゲームのいかさまに気づいて、僕らのことを脅迫したんです。それで奥方――ようするにシンディのことですが――と一晩ベッドをともにさせてくれたら、みんなにはそのことを黙っていてやろうと言うんで、僕はすぐ荷物をまとめてここから出ていこうと思いました。でもこのホテルにはあまりにもいいカモが多かったもんで、シンディと僕は相談して誰か別の女性にエヴァンズの相手をさせてはどうかと考えたんです」
「それはようするに商売女――売春婦にお金を払ってきてもらったということですか?」
「いいえ……僕たちはこのホテルのメイド係に、その役を頼みました。ミス=ダイアナ・ギブソンに」
 マイケルは呆れるあまり、黒い革表紙の帳簿を大きな音をさせてパタン!と閉じていた。
「彼女、確かまだ二十歳かそこらの年齢でしょう!?それなのにあなた方は……」
「あら。でもべつにあたしたちが無理矢理強制したわけでも、エヴァンズからもらったであろう金の一部を渡せと迫ったわけでもなんでもないわ。むしろダイアナはすごく乗り気だったんです。こんな田舎の村で埋もれるのなんか絶対ごめんだから、まとまったお金をくれるならやってもいいって言ってくれて……」
「で、一体いくら渡したんです?」
「千ユーロですよ」マークが目を逸らすように、床の上の絨毯の模様を見つめながら答える。「でもあの娘、僕らが思っていた以上にやり手でしてね――その後もこのホテルの何人かの男と関係を持って、お金を貰っていたようなんです。僕が思うに、彼女がホテル勤めを辞めたのは、自分が目標としていた金額のお金が貯まったからか、あるいはホテルの支配人にそのことがバレそうになったかのどっちかなんだと思うんです。ようするにまあ、ギブアンドテイクっていうことですよ」
「なんにしても、この帳簿は重要な証拠品として預からせてもらいます」
 マーク・コリンズはマイケルが怒りを抑えた口調でそう言っても、冷静な表情をまったく崩さないままだった。彼はおそらく法律に詳しく、こうなっても(殺人の罪さえ犯していなければ)法の網をかいくぐる方法はまだあると計算していたに違いなかった。
 もしアメリカ国籍の彼らふたりをアイルランドの法廷で訴えたところで、おそらくは有能な弁護士が横からしゃしゃり出てきて、本国で裁判を受けさせようとするだろう。
 そしてカードゲームに負けた資産家のうちのひとりが、よほど怒り狂ってコリンズ夫妻を追い詰めようとでもしない限り――実刑判決が下ることまではないように思われた。
 その後、マイケルは一度フェロー警視の部屋へ戻ると、事のあらましを大体のところ自分の上司に説明し、コリンズ夫妻の帳簿を彼の金庫に一時的に預かってもらうことにした。
 そうしてから、時計の針が十三時をとっくに過ぎていることに気づき――慌ててレベッカ・ウォードと待ち合わせた場所へすっ飛んでいったというわけである。



 >>続く……。




ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック