CooL&PassioN 2

 す、すみませんww
 またしてもタイトルが思い浮かばなくてですね……んでもって、前に同名の妄想SS☆を書いてるんですけど、そっちよりこっちのがたぶんタイトル的に合ってるだろうと思って、<2>っていうことにしました。でも内容的には<1>とまったく繋がりも関連性もありません(^^;)そういうことで、よろしくお願いしますね
 今回の妄想SS☆は、まあぶっちゃけ設定自体おかしいんですけど(^^;)、わたしのレベルだとどうも、このくらいのエロが身の丈にあってるみたいだと書いてて思いました(笑)
 特にR指定はしませんが、とりあえずウル×織推奨派の方以外は読まないほうが無難だと思うので、そんな感じでよろしくお願いしますね
 なんにしても、織姫のシャワーシーンとか織姫がウルたんを押し倒すところとか、前から書きたかったシーンを大体入れられて、自分としては満足な感じです♪あ、もちろんこのSS、織×ウルではなくあくまでウル×織なので、その点についてはどうか御安心(?)を……(^^)

 そういえば今週のジャ○プ、ブリーチのところだけ立ち読みしましたww
 わたし、ワンダーワイス好きなので、ギンに「可哀想☆」って言われててなんか悲しくなりました
 いえ、ギンは結構好きなんですけど、話が最後のほうに近づくにつれて、相当嫌な奴っぽくなっていくんじゃないかなって、なんか心配(?)になったり(^^;)
 うん、ウルたんファンの方には41巻以降を買うことはあるまい☆って方多いと思うんですけど(わたしもそうだと思います)、でも全体的な流れとしてブリーチが今後どうなっていくかっていうのは、やっぱり関心を持ってて――それもやっぱりウルたんのお陰なのかなっていう気がしてます彼が藍染様に従うことで見たかったもの、見届けたかったものをかわりに(というか一読者として一緒になって)見ておきたいっていうんでしょうか。
 第二階層の解放姿は藍染様にもお見せしていなかったというウルたん……彼もまた自分は駒にすぎないとわかっていて戦っていたのかどうかとか、そのあたりのこともとても気になります。40巻読んでて、ウルたんって自分が破面であることに強い誇りを持っていたんだなって思ったし、他の同胞のためにもホロウ☆っていう存在の背負う虚しい状態を変えたいと彼が思っていたのかどうかとか……ハリベル様やバラガン、それにスタークVS死神(&ヴァイザード)戦で見えてくるものってあるのかなって思ったりもするので。。。
 それにしても白、仮面ラ○ダーっぽいですよねwwウルたんはウル○ラマンに似てるとか、解放姿もろデ○ルマンやんかwwってよく言われるし。ハリベル様の解放姿は、わたしの目にはプ○キュアっぽく見えましたwwでも声が緒方恵美さんだから、せ○むんのほうがいいのかな(^^;)
 なんにしてもわたし、藍染様が王鍵の創成とかいうのに失敗して、最後に罰(?)として山本総隊長から<破面戦隊アランカル>を結成して世直しに励め!!とか言われてたらいいwwなんて、勝手に妄想してます(笑)
 そして全死神キャラの中で、一番死ぬ可能性が高いのって、きっと山本総隊長っぽいなと思ってるので、そのへんちょっとドキドキ☆してたり。。。
 まあ、とりあえず40巻のあの終わり方は、「次週からは悪魔戦士・ウルキオラをお送りします☆」な感じで終わってるので、自分的にはそこからも色々妄想しちゃいます(←アホ☆)
 なんかくだないことばっか書いてますが(いつものこと^^;)、↓のSSは微エロ程度じゃないかと自分では思ってるので、お楽しみいただけたら嬉しいです♪
 それではまた~!!(^^)/



          CooL&PassioN 2

 ――熱い。どうしてこんなに熱いの……。
 織姫は、目が覚めると同時、喉にザラザラとする感触を覚えて、そこに手をやった。まるで、砂が体の神経のすべてを冒しつつあるような、そんな奇妙な感覚。時の経過する感覚もすっかり捩れて、ただ自分の口許から聞こえる呼吸音を、まるで他人のそれのように聞くことしか出来ない。
 短く、荒い息しか今織姫は着くことが出来なかった。深呼吸しようとして、深く息を吸いこもうとすると、途端にむせてしまう。どうしてこんなことになってしまったのだろうと、記憶の糸を手繰りよせると、そこにはどこか無機的に白い肌の、破面の男の姿がある。

『俺と来い、女』
 ――彼は、自分の言っていることは『交渉ではなく命令だ』と言った。
 けれど、彼に……ウルキオラ・シファーという名の破面についていくことを決めたのは、他でもない織姫自身の決断だった。
<仲間を楯にとられた状態>――確かにそれはそうかもれない。けれど、実際12時間という猶予を与えられ、ひとりだけとはいえ、別れを告げることまで許可された。その上で彼の指定した場所に0時という刻限に向かったということは……これはすでに自分の「自由意志」における行動だった。
 ウルキオラはあの時、その気にさえなれば、断界のあの場所から、強引にでも自分のことを連れ去ることは可能だっただろう。そのことを思うと、微かな後悔の念が暗い雲のように胸をよぎっていくのを織姫は感じる。
(あの時……もしかしたらあたしは、間違った選択をしてしまったのかもしれない。何もかも全部ひとりで決めて、ウルキオラさんについていくことが、みんなのためにもなることだって、自分ひとりが犠牲になれば済むことなんだって、勝手にそう思いこんでしまっていた。でも、もしかしたらそれは違っていたのかもしれない。あたしは――たぶん、きっと……)
 そこまで考えているうちに、織姫はだんだんと意識が混濁していくのを感じはじめていた。
 この症状が現れはじめると、一時的に意識がどこかへ飛んでしまう……それでいて、眠っているのとはまるで違う疲労感が、目覚めと同時に襲いはじめるのだ。
(こんなの、もういや……)
 両の瞳から涙があふれて、それが目尻を伝い、こめかみのほうへと流れていく。
 織姫は破面のウルキオラ・シファーに、先日泣いているところを見られたことを思いだし、慌ててごしごしと目頭をぬぐった。
(もし今また彼が突然部屋に入ってきたら――『何故泣いている、女』なんて言われちゃう………)
 織姫がベッドに伏して今のような病気の状態になったのは、ラス・ノーチェスへやってきて三日ほどした時のことだった。最初は何か風邪の類いだろうかと織姫自身は思っていたが、やがて小さな時に経験した麻疹に似た症状が全身を襲いはじめ――ついには動くのもやっとという状態になってしまったのだ。

「人間が生身の肉体のままウェコムンドへやってくると、抗体ができるまでに少し時間がかかるらしい。まあ長くて二十日程度のことらしいから、それまではぐっすりと休め」
「ええっ!?どうしてそういう大切なこと、もっと早くに言ってくれないんですかっ!!」
 人が熱をだして苦しんでいるというのに、ウルキオラ・シファーという名の破面は、無表情に涼しげな顔で「それがどうした」と言わんばかりの態度だった。
 織姫は体が思うようにならないことに対する苛立ちもあって――それから後も、随分色々なことについてウルキオラに文句を言ってしまった気がしていた。けれど、ところどころ記憶がはっきりしていなくて、彼が口許まで持ってきたスプーンを手で払ってしまったりだとか、「もうあたしを帰して!!」と錯乱したように叫んでしまったり……そういう支離滅裂な行動をとってしまった記憶が、断片的にあるだけだった。
 にも関わらず、ウルキオラは毎日、何もなかったような顔をして織姫の部屋までやってくる。
 そして自分の体を起こさせて、お粥をたべさせてくれたり、汗をかいた体を冷たいタオルで拭いてくれたり……。
(そ、そうよね。きのうみたいなことにならないためには――今日こそは自分でシャワーを浴びなくちゃ………)
 織姫はきのうあったことを思いだし、病気による熱ではなく、感情に作用されたことによって生じた熱が――体の芯を火照らせるのを感じていた。
 薄地の布団の下で織姫が身に着けているものはといえば、白いタンクトップにパンツという、その二枚だけ。
 そしてきのう、ふと自分の体に触れる冷たい手を感じて――織姫はベッドの上に反射的に体を起こしていたのだった。
「じっとしていろ、女」
 目が合うなり、織姫はウルキオラにそう言われた。
 そして自分が今、どういう状態なのかに気づいて――反射的に両方の手で自分の胸を織姫は隠していたのだった。
 ウルキオラは強制的に織姫のことを寝かしつけると、桶の中の水にタオルを浸し、それを絞っていた。
「や、やめてください。自分で出来ますからっ!!」
 織姫は、自分の足をあげてふくらはぎを拭こうとするウルキオラのことを、拒絶するように跳ねのけようとした。けれど、彼はそのことを許さず、あろうことかベッドの柱に織姫の手を縛りつけてよこしたのだった。
「じっとしていろと言ったはずだ。それとも何か?俺に裸を見られて恥かしいとでもいうのか?死人に裸を見られて恥かしいとは、おまえもおかしな女だな」
「……変な理屈、こねないでくださいっ!!」
 織姫は両方の目をぎゅっと閉じると、ウルキオラの冷たい手が自分の体の上を滑るのに任せていた。
 冷水に浸したタオルで拭いてもらえるのも、本当はとても気持ちがいい――でもそんなことは、口が裂けても言えないことだった。
「俺は、おまえが寝ている間に毎日これをしている。今日は運悪くおまえは目を覚ましたようだが……何も気にする必要はない。どうせあと何日かすれば、おまえの中にここウェコムンドの空気に対する抗体ができて、自然免疫力も回復することだろう。そうなれば俺もおまえの看病から解放されるし、おまえも元気になる。まあ、お互いにあと数日の辛抱といったところだ」
「……………」
 この時、織姫にはそれ以上、何も言うことが出来なかった。
 胸を持ち上げて、その下をタオルで拭く間も、体を引っくり返して背中を拭く間も――ウルキオラ本人に何かいやらしいような意図はまるで感じられなかったからかもしれない。
 彼のそれはとにかく、人間でいうところの、プロの介護人の作法に近かった。
 事実、ウルキオラが全身を拭いてくれたあと――織姫は気分的にすっきりとし、熱が下がって一時的に体が軽くなったような気さえしていた。
 そして、林檎のすったのを彼が口許まで持ってきてくれたことに対して、「自分で食べられますっ!!」などと、邪険な態度をとってしまい、織姫はそのあと随分長い時間、自己嫌悪に苛まれたものだった。

(今日はもう、ウルキオラさんに迷惑かけないようにしなくっちゃ……)
 織姫はハァハァ、と荒い息を着きながらも、なんとか体を起こし、ふらつく足どりで壁際沿いにシャワー室まで歩いていった。
 部屋の内部にバスルームが設置されてあり、体や髪を洗うのに必要なものはすべてそこに一揃い置いてある。
(ウルキオラさんが来たら……今日は自分でシャワーを浴びたから、体は拭かなくてもいいですって言わなくちゃ。でも突然意識が飛ぶようなあの症状がでたら、どうしよう。でもとにかく今は、シャワーを浴びてすっきりして……)
 織姫はきゅっと蛇口をひねると、温度を調節して、ぬるめのお湯を頭から浴びた。
 そしてスポンジを手にとり、ボディシャンプーをそこへしみこませようとして――不意にくらりと立ちくらみに似た症状を覚えていた。
(どうしよう……やっぱり大人しく寝てたほうがいいのかな)
 タイル張りの冷たい床に膝をつき、織姫は気が遠くなるような例の症状がではじめるのを感じていた。
 そして完全に気を失う前にと思い、慌てて壁にかかるバスタオルに手を伸ばそうとして――出来なかった。
(本当にいやだ、もうこんなの……)
 ごほっ、ごほっと咳きこみ、全身に力が入らなくなっていくのを感じる。
 この症状がではじめてすでに十日――長くて二十日くらいと言ったウルキオラの言葉が真実だとすれば、そろそろ回復の兆しが見えてもいい頃なのに、ますます病状は悪化するばかりという気が、織姫はしていた。
(あたし、もしかしてこのままこの場所で、ひとりぼっちで死ぬのかな……)
 そんなことさえふと、脳裏をよぎる。またこれは、アランカル側の手のこんだ陰謀で、抗体云々という話はでたらめなのではないかと、この時織姫は初めて思った。こうして自分の力を常時弱めておいて、拘束しておけば――捕虜として捕えた囚人が、余計な動きをするのを留めておけるというわけだ。
(ううん、でもそんなの無意味よね。彼らは殺そうとさえ思えば、いつでもあたしをそうできるんだもの……たぶんあたし、ずっとベッドで寝てばかりいるから、ちょっと被害妄想っぽくなってるんだ。なんにしても、もっとしっかりしなくちゃ……)
 そう思い、織姫がなんとか体に力を入れてバスルームからでていこうとした時――ドアの外側で、誰かの足音がした。
 そしてカツカツ、というどこか無機質で規則正しい靴の音が、織姫のすぐ目の前で止まる。
「女、一体そこで何をしている?」

 キィ、と軋んだ音とともにバスルームのドアが開けられても――織姫は声を上げて抗議することさえ出来なかった。
 むしろ、彼が来てくれて良かったとさえ思っている自分に驚いてしまう。
 もろちん、裸のまま這いつくばるような格好をしているところを見られるのはとても恥かしい……でも本当に、もうこれ以上は自分の意志で体を動かすのは無理だとわかっていた。
「馬鹿な女だ……ひとりで風呂に入れるほど、自分の五体が回復しているとでも思ったのか?」
 ウルキオラはそう言い、シャワーの蛇口をひねって水を止めると、織姫の体の上にバスタオルをかけて寄こした。
 そしてそうした上で、彼女の裸の体を抱きあげる。
「しっかりしろ、女。今ベッドまで運んでやる」
 織姫はほとんど反射的にウルキオラの首に自分の両手をまわしていた。
 彼の体は冷たくて、本当に気持ちがいい――織姫はウルキオラにベッドの上へおろされた後も、彼の体に触れていたくて仕方なかった。
 そしてウルキオラの指が髪に触れ、首筋に触れ、それが胸の谷間に達しても、織姫はただ黙ってされるがままになっていた。
 もろちん彼は他意なく、自分の濡れた体を拭いてくれているに過ぎないと織姫にはわかっている。
 けれど、ウルキオラの手が完全に離れ、彼が丁寧に薄い掛け布団をかけてくれた時――織姫は<寂しい>と感じた。ウルキオラはいつも、必要最低限の自分がしなくてはいけないことをしてしまうと、「もはや用はない」とばかりにどこかへ行ってしまう。
「……お願い、いかないで………」
 自分でも気づかないうちに、織姫は泣きながらそうウルキオラに言っていた。
「ひとりぼっちにしないで………」
 織姫が去っていこうとするウルキオラに手を伸ばすと、彼は振り返り、しばし躊躇ったのちに織姫のその手をとっていた。
「どうした、女。あと十日もすればおそらくおまえは完全に回復する……それまでは不自由でも、我慢して耐え忍べ」
 あまりにも彼らしい物言いに、織姫は一瞬くすりと笑ってしまった。
 そして、これは彼らアランカルの何がしかの陰謀ではないかと疑った自分が、織姫はおかしくてたまらなくなる。
(もし本当にそうだったとしたら、ウルキオラさんがこんなに優しいはずなんてない……)
 そう思って、織姫は思わずそのあともひとしきり笑わずにはいられなかった。
「もしや先ほどバスルームで頭でも打ったか、井上織姫。おまえの行動はまったく、俺には理解できん」
「ごめんなさい」と、織姫はすぐにあやまっていた。そしてウルキオラの優しくて冷たい手を、両方の手で包みこむように握り返す。
「ラス・ノーチェスにやってきてから、あたし、ウルキオラさんに我儘ばっかり言ってた気がする……本当に、ごめんなさい」
 ウルキオラは、暫くの間黙っていたあとで――「おまえが気にする必要はない」と、ようやくそう言った。
「そもそも俺は、病人の言うことなぞ、いちいち気にするほど繊細な質でもないんでな。おまえが体を拭いている最中に蹴飛ばしてきたことも、お膳を引っくり返して暴れたことも……全部寛容に許してやろう」
「あ、あたし、ほんとにそんなことしてたの!?」
 織姫は熱のせいばかりではなく、顔を真っ赤にしていた。けれど、ウルキオラの手を離すつもりにはなれなかった。
「覚えていないというのなら、あえて思いだす必要もないだろうが――まあ、許してやるというよりは、忘れてやる。おまえの蹴りが俺の鳩尾に決まって、少しの間動けなかったことなんかもな」
「……ご、ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい、ウルキオラさんっ!!あたし、ほんとになんて言ったらいいか……」
「いや、今のは冗談だ」
 ――え、ウルキオラさん。もしかして今、笑った……!?
 織姫は驚くあまり、ウルキオラの手をぎゅっと握りしめていた。だが、今度は逆に彼のほうが身を引いて、どこかへ行ってしまおうとしている。
「おまえが笑えるくらいに回復したというのなら、結構なことだ。今日は食事くらい、ひとりで食えるな?おまえが起きていられるうちに、運ぶよう手配しておくから――もう十分もすれば、ここに食事が届くだろう」
「……はい」
 せっかく気持ちが近くなったと思ったのに……そう思った途端にウルキオラが自分を突き放したような気がして、織姫は内心傷ついていた。
 きのうはあんなに優しく――自分の体に触れてくれていたのに、今日はもうそれがない。
 そしてこの病気の奇妙な症状が全回復してしまえば、彼が自分に触れてくれることは二度とないのだと思うと、織姫は胸に哀しみが満たされるのを感じないわけにはいかなかった。

 次の日の夜――織姫の病状は今までの中で一番、最悪といってもいいくらいに悪化していた。
 喉がカラカラにひからびたようになり、体中の穴という穴から汗が吹きだすのを感じる……そして織姫は(まただ)と、熱に浮かされた頭の中で考えていた。
(きのうは、少しの間症状が一時的に引いて――このままきっと良くなるんじゃないかって思ったのに……)
「……み、水………」
 枕元にはいつも、ガラスの水差しとコップが置いてある。
 織姫はハァハァと息も絶え絶えになりながら、それを貪るように飲もうとした。けれど、水差しからコップに水を注ごうとした時に――ごほっ!!と二度ほど咳き込んでしまい、ガラスのピッチャーが割れて床が水浸しになってしまう。
「どうして……もういや………っ!!」
 そしてふと、この瞬間に織姫は、これまで欠けていたある記憶が自分の脳裏に甦ってくるのを感じていた。

『こんなのもういやっ!!あなたなんて大っ嫌い!!』
 そう言って自分は――ウルキオラに対して、ガラスのコップを投げつけていたのだ。
 織姫はその瞬間に彼が、いつもの無表情な眼差しで自分を見つめ返してきた瞬間のことを、はっきりと思いだす。
 床に散らばったガラスの破片……そしてその破片で手首を切ろうとした自分のことを、ウルキオラが止めようとしたことも。その上、その時にガラスの破片が手に食いこんで、ウルキオラは血まで流していたのだ。
『あ………』
『気にするな。この程度の傷など、怪我のうちにも入らん。それよりもおまえは早く休め』

「どうしよう……あたし………」
 他にも、随分色々ひどいことを言ったのかもしれないと思うと、織姫は病気の症状のせいではなくて、まったく別の意味でひどく胸が痛んだ。
「あやまらなくっちゃ、あたし……ウルキオラさんに………」
 織姫がそんなふうにぶつぶつ独り言を呟いていると、不意に廊下のほうからカツカツといういつもの規則正しい足音が聞こえてくる。
「――入るぞ」
 そう言うなり、ウルキオラはいつも返事を待たずに部屋に入ってくる。
 そしてベッドの上に体を起こしている織姫のことを見、床に散らばるガラスの破片のほうへ目を移した。
「なんだ、またやったのか。まさかとは思うが、それで手首を切ろうとしたわけではないだろうな?」
「……水が欲しくて………」
 織姫は、突然にまた激しい喉の渇きを覚えながら言った。
「そしたら、咳きこんでしまって、手が滑ったの。だから……」
「そうか。ならばいい。水ならまた汲んできてやる」
 カッ、と踵を返そうとするウルキオラの白い服の裾を、織姫は反射的にギュッと掴んでいた。
「……女、これは一体なんの真似だ?」
「あ、あたし……ウルキオラさんにあやまりたくて。そしたらすぐウルキオラさんが来てくれたから……これはきっと以心伝心だと思うの」
「以心伝心だと?貴様、また熱に浮かされて訳のわからんことを……」
 織姫はさらにウルキオラの服の裾を強く引っ張ると――彼がベッドの上に腰かけざるをえないようにしてやった。
「ごめんなさい、あたし――本当に本当に、ごめんなさいっ!!」
 もう、恥も外聞も何もなかった。
 織姫はほとんどウルキオラの体を押し倒すような格好になり、彼の上半身をそのまま抑えこむ。
「大っ嫌いなんて言って、ごめんなさいっ!!でも本心じゃなかったの。あたし、ウルキオラさんの言うとおり、熱で記憶があちこち飛んでて――それでさっきガラスの水差しが割れるのを見て思いだしたのっ!!あたし、嫌な子でした、本当にごめんなさいっ!!」
「いや……」
 あまりに激しい形で一方的にあやまられ、ウルキオラは顔の表情にはださぬまでも、多少面食らっていた。
「まあ、そう気にするな。きのうも同じことを言ったような気がするが――俺は病人の言うことをいちいち気にするほど、繊細な質ではないんでな」
「ほ、ほんとに!?」
 上から見下ろす織姫の顔から、涙が数滴、ウルキオラの頬に落ちかかる。
 それでウルキオラは思わず、女の紅潮した美しい顔に手を伸ばさずにはいられなかった。
「ああ、本当だ。だから、泣くな。おまえが俺のことを嫌いでも――俺はさして気になどしない」
「違うんですっ。あたし、ウルキオラさんのこと、嫌いなんかじゃありませんっ!!だから、だから――っ!!」
 ほとんど犬のように四つん這いになって、織姫はウルキオラの体の上にのしかかっていた。
 そして(とりあえず、なんでもいいからどけろ、女)とウルキオラが言いかけた瞬間のことだった。
 ――柔らかい何かが、ウルキオラの唇の上に押しあてられる。
「……女、これは一体なんの真似だ?」
「えっと、あたしはウルキオラさんが嫌いじゃありませんっていう、証拠のキスです!」
「……………」
 顔を、熱のせいばかりでなく朱に染めてそう言った織姫に、ウルキオラはどう反応していいかわからなかった。
 けれど、ウルキオラが黙っていても、織姫はひとりで勝手に喋り続ける。
「あたしがウルキオラさんだったら――誰かに大っ嫌いって言われたら、何日かの間は絶対へこんじゃう。でも本当に嫌いだったら、キスなんて絶対しないから……」
「おまえは、どうやら本当に熱で頭がどうかしたらしいな」
 どけろ、そうウルキオラが強い調子で命じると、流石に織姫としても体の重心をよけないわけにはいかなかった。
「待ってろ、今水を汲んできてやる」
「ウルキオラさん……」
 はっきりとはわからなかったが、それでも織姫にも、ウルキオラが気分を害したらしいことくらいはわかっていた。
 そして自分としては善意のつもりだったキスも、彼には余計な何かだったのだろうとわかり、織姫はがっかりと気分が落ちこむものを感じていた。
(これで、仲直りできると思ったのに……)
 そう思うと、また涙がこみあげてくる。
 織姫はこの時、病気の強い症状が一瞬去り――そしてウルキオラがいなくなると同時、またそれが戻ってくるのを感じていた。
「どうして……」
 ごほっ、ごほっと何度も咳きこみ、そしてくらりと眩暈に似た症状がまた現れる。と同時に、全身の穴という穴から、汗が吹きだしてくるのを、織姫はベッドの上に倒れこみながら感じていた。

「ウルキオラさん……ウルキオラさん………っ!!」
 ――そのあと、随分長い間、織姫はうなされたように彼の名前ばかり呼んでいた。 
 すると、ひんやりとした感触が手のひらにあたり、織姫は縋りつくようにその相手の指を求めていた。
「ほら、水だ、女。飲め」
 ぐいっと、コップを口許にあてがわれるが、うまく飲みほすことが出来ない。
 その上、寝ながらの行為だったために、むしろまたごほっと噎せてしまった。
(やれやれ……まったく手のかかる女だ)
 もし先ほどの織姫からのキスがなかったら――ウルキオラもそんなことをしようとは思ってもみなかっただろう。
 だが先ほど織姫のほうから唇を重ねてきたことで、それと同じことをまた行おうがこの場合女の意志を無視したことにはなるまいと、ウルキオラはそう考えることにした。
 それで女のかわりにコップの水を含み、口移しでそれを飲ませてやることにする。
 ごくり、と女が水を飲む喉の音が聞こえるたびに、少しずつ流しこむ量を増やしてやる……それでも、女の口の端から水が微かに洩れてしまってはいたが、(とりあえずこんなところでいいだろう)と思ったウルキオラは、織姫から唇を離すと同時、彼女の口許から水とも唾液ともつかないものを拭ってやっていた。
「ウルキオラさん……」
 ありがとう、と寝言で織姫が言うのを聞いたウルキオラは、やや呆れながらコップの水をナイトテーブルの上に置いていた。
(まったく、おまえはわかっているのか、いないのか……まったくわからん女だな)
 ウルキオラは、中庭にある泉まで水を汲みにいく途中で――あるひとりの男と出会っていた。
 名前を市丸ギンといい、主である藍染様の片腕といっていい男だった。
「可哀想になァ、織姫ちゃん」
 と、実際には可哀想とも思ってなさそうな口ぶりで、市丸ギンは言った。
「君がほーんのちょっとやる気にさえなったら、熱なんかあっという間に下がりよるのと違うの?ほんのちょっと君が抗体になる物質を入れてあげたらいいだけの話やのに……」
「なんのことを言われているのか、さっぱりわかりませんが」
 ウルキオラは素知らぬふりをして、コップに水を汲むとその場をあとにしようとした。
「ボクは死神やから、君と同じことするってわけにもいかないやろけど、そやなァ。それでもボクが君と同じ破面やったら――十日も持たなかったやろなあ。あんな可愛い娘、目の前にしてたら……」
「失礼します」
 市丸ギンに、何か仕事のことで言いたいことがあるわけではないらしいと察したウルキオラは、早々に彼との会話を打ち切ることにした。
 以前、「君、てっきりボクのこと嫌ってるのかと思うとったけど」などとおどけたように言われたことがあるが――好き・嫌い以前の問題として、ウルキオラにはよくわかっていた。
 市丸ギンという男が、アランカルやホロウといった存在をただのゴミにも等しい存在としか思っていないということを。

「よかった……ウルキオラさんがいてくれて………」
 織姫は目を覚ますと、すぐ隣にいるウルキオラのことを嬉しそうに見上げていた。
「仕方がないだろう。貴様が俺の服の袖を掴んで放さなかったら、ここにいるより他にどうしようがある?まさかおまえの指を手首ごと切り落とすというわけにもいかないだろうしな」
「もう、ウルキオラさんったら……」
 織姫はベッドの背もたれに寄りかかって体を起こそうとしたが、また眩暈を起こしたのだろう、上体が微かに傾いでいた。
「しっかりしろ、女。あともう少しでおまえの体の中にも抗体ができるだろう……それまでの辛抱だ」
「あの、ウルキオラさん」と、織姫は不意に、何かの決意を秘めたような眼差しで、ウルキオラのことを見返していた。「あたし……本当に治るんですよね?もうずっとこのままっていうことは………」
 ウルキオラは一瞬溜息を着きそうになったが、かろうじてこらえた。
「いや、それはない。とはいえ、人間の女が生身のままでウェコムンドへ来たということは過去にそう例のないことなんでな……俺にもはっきりしたことは言えないが、俺が思うにおまえは少し特殊な体質なんだろう」
「特殊って……」
 気落ちしたように、掛け布団を指でいじっている織姫のことを、ウルキオラはじっと見つめたままで言った。
「適当な例えかどうかは俺にもわからんが、たとえば仮にプラスのオーラとマイナスのオーラを持った人間がいたとして――マイナス寄りのオーラを持った人間は、ここウェコムンドへ来てもどうということはないだろうな。おまえのように病気にさえならない場合もあるだろう。だが、おまえの力はおそらく<陰>ではなく<陽>に属するものなんだろうから――それでおまえはおそらく抗体が出来にくい体質なんだ」
「あ、あの……」
 織姫がためらいがちに、それでもどこか決然とした眼差しで、またウルキオラのことを見返してくる。
「何か、薬みたいなものってないんですか?あたし、人間の世界ではいつも風邪をひいたらお医者さんにいってお薬もらったりしてて……たとえば、何か抗生物質のようなものとか」
「そんなものはない」
 ウルキオラは即座ににべもなくそう返答していた――市丸ギンが示唆したような可能性のことなど、わざわざ女に知らせる必要はない。ウルキオラはそうとしか思わなかった。
「いずれにせよ、ここウェコムンドの空気を吸っているうちに、いずれは体が自然と馴染んで完全によくなる。おまえが心配することは何もない」
「……………」
 ウルキオラが椅子から立ち上がって部屋からでていこうとすると、また織姫が、ウルキオラの白い服の裾を掴んでくる。
「今度は一体なんだ?まだ俺に何か聞きたいことでもあるのか?」
「……そばに、いてください」
 ウルキオラは織姫のその一言で、弾かれるようにベッドの上の彼女のことを振り返っていた。
「おかしいですか?こんなこと言うの……でも、あたしはウルキオラさんにそばにいて欲しいんです。特に何も用事なんてなくてもいいから――何もお話することなんてなくてもいいから、ただそばにいてくれたら、それだけで………」
「わからんな」と、ウルキオラはあえて冷たく突き放すように言った。
「おまえが言っているのは、誰でもいいからとにかくそばにいて欲しいということか?それなら誰か適当な女のフラシオンでも、話相手に寄こしてやろう。それでいいか?」
 織姫はいやいやをするように、何度も首を振っている。
「どうして……どうしてわかってくれないの!?あたしはウルキオラさんにそばにいて欲しいって言ってるのにっ……!!」
 ウルキオラは、自分の破面服の裾で織姫が涙をぬぐっているのを見て――どうしたらいいのかわからなくなった。
 とりあえずはそのまま、ベッドの縁に腰かけることくらいしか出来ない。
「女、泣きやんだか?」
(まったく、人間の女というのは本当に手のかかる生き物らしいな……)
 そう思いつつ、ウルキオラは織姫のことを抱きよせていた。
「ウルキオラさんの体って、どうしてこんなに気持ちいいんですか?」
「……………」
 突拍子もない女の突然の質問に、流石のウルキオラも言葉に詰まった。
 すると、織姫のほうでも自分の言った言葉の意味がわかったのだろう、ハッ!としたようにウルキオラから急いで体を離している。
「あ、違うんですっ!!そういう意味じゃなくて……あたし、熱っぽいから、ウルキオラさんの体って冷たくて気持ちいいなっていう、そういう意味で……」
「天然も、そこまでくると一種の特技だな」
 そう言って、ウルキオラは白い破面服の上着を脱いでいた。
「……………!!」
 織姫は、自分の言った言葉の意味を誤解されたと思ったのかどうか、顔を真っ赤にしてウルキオラから視線を背けている。
「勘違いするな、女。これはおまえの言っているような意味じゃない。おまえが俺の体をアイスノンがわりにしたいというのなら、そうしろという意味だ」
「は、はい………」
 そばにいて欲しい、などと言ってしまった手前かどうか、織姫はウルキオラにもう一度抱きつくと――ベッドの中で静かに横になっていた。
「やっぱり、すっごく気持ちいいです。ウルキオラさんの体って」
 頬ずりするようにウルキオラの胸にもたれかかり、織姫はもはや遠慮なく彼の背内に手をまわしてさえいた。
 そして彼の喉元の<孔>をじっと見上げて――何故そんなことをしたのかは、織姫自身にも説明がつかなかったが、織姫はその彼の体に開いた孔を舌でぺろりと嘗めていた。
「………ッ!!おまえ、今一体なにを……!!」
 バッ!と、まるで電流が発生したとでもいうようにウルキオラが体を離すのを見て――織姫は驚いていた。
 いつもは冷静沈着な彼が、微かに顔を赤くしているのがわかる。
「あ、あの……孔が開いてて痛そうだと思って、だから治療しようかなって思ったんですけど………」
「必要ない。もしまた同じことをしたら――」
 ウルキオラは、まるで初めて相手の弱味を見つけたような、そんな顔を織姫がしていることに気づいていた。
 それで、もうこれ以上は自分の理性も限界だと、そう悟ったのだ。
「女、ひとついいことを教えてやろう……俺がおまえの病気を治してやれると言ったら、おまえはどうする?」
「えっ!?でもさっき、治療薬のようなものはないって……」
 ザッ、と、ウルキオラは驚いたような顔の織姫のことを、有無を言わさず押し倒していた。
 女の顔を見下ろすと、これから自分が何をされるのかまったくわかっていないのが、手にとるようによくわかる。
「俺の中にある抗体を……おまえの中に入れてやる。そうすれば、おまえはすぐによくなるだろう」
 ぺろり、と捕えた獲物を蛇が舌でなめるように、ウルキオラは女の首筋を――頚動脈にそってなめてやった。
 途端、ゾクリとおそろしいほどの寒気のようなものが、織姫の全身を貫く。
「俺の言っている意味がわからぬほど、おまえも幼いわけではあるまい?何しろ、この俺をその気にさせたくらいだからな……」
「わ、わかりません……!!」
 心臓の鼓動が跳ねあがって、織姫はウルキオラから逃れようと必死にもがいた。
 見ると、自分が捕えた獲物の動きをじっと観察するようなウルキオラの翡翠色の瞳がすぐそばにある。
 今度は水を飲ませるという目的なしにキスされるように織姫は思ったが、彼は結局そうしなかった。
 まるで、拒絶するように顔を背けた織姫の意志を尊重するかのように、顎にかけた手を不意に逸らしている。
「アランカルの体から抗体を摂取して、おまえの血中に注射したところで――ほとんど効果はない。だが、おまえが本当の意味で我らが同胞になるというのなら、すぐにもおまえの熱は引く。俺が何を言っているのかわからないとは、もはや言わせはしない」
「あ……でも、本当にわたし………!!」
 織姫には、ウルキオラの言っている言葉の意味が、本当にまるでわからなかった。彼がこれからしようとしていることと、自分の病気との間にどういう接点があるのかもまるで理解できない。
 ただ、ウルキオラが黒い爪で自分のタンクトップをビリッ!!と破いたことで、彼が<本気なのだ>ということがわかったくらいだった。
 肌に触れる指使いが、きのうの体を拭いていた時のそれとはまるで違う。
 それに、ウルキオラに舌で肌の上をなめまわされると、織姫はもう麻痺したように体を動かすことさえ出来なかった。
(な、なんなの……この感覚………!!)
 最初に感じるのは、ゾクリとするような寒気――まるで鳥肌が立つような。けれど、そのあとに快楽そのものといっていい感覚が、体中の毛穴を突き抜けていく。
 織姫にはもう、ウルキオラに逆らう気力も抗う力も残されてはいなかった。
 ただ彼の愛撫に身を任せて、甘い痺れのようなものが体の芯を刺激するのを感じていることしか出来ない。
「あ……い、いやっ………!!」
 それでも流石に、足を開かれ、ウルキオラが太腿の内側に舌を這わせた時には――織姫は恥かしさのあまりそう叫び声を上げた。
 すると不意に、ウルキオラの肌に舌を這わせる愛撫がやむ。
「どうした、女……あの死神の男、黒崎一護の顔でもちらついたか?だがもう遅いな。俺はもうおまえに選択するための時間ならば十分に与えてやった。おまえがあくまでも一途にあの男のことを想い続けるというのなら――井上織姫、おまえは俺に対してそういう態度でいるべきだったんだ。だが、この俺を自分から誘惑した以上は、その責任をとってもらうぞ」
「……………!!」
 黒崎一護という初恋の男の名前をだされて、織姫は急に自分が今ウルキオラにされていることの怖ろしさを再認識した。
 けれどいつものように(助けて、黒崎くん!!)とは、心の中でさえ叫べなかった。
 そうだ、確かにここウェコムンドへやってくる前に、自分はある<選択>をした。それは彼にもう二度と会えないかもしれないという選択だった。けれどずっとこれから先も永遠に――織姫は彼のことを好きでいられる自信があった。そしてそういう気持ちがあればこそ、こんなウェコムンドなどという恐ろしい世界にやって来ようという勇気もでたのだ。
(それなのに、あたし……本当に、最低な子だ………)
 ウルキオラが優しくしてくれるのをいいことに、病気で錯乱していたとはいえ我儘なことばかりを言い、自分勝手に彼を求めながら、それでいて体を求められれば拒絶しようとするなんて……。
(あたし、本当はこうされて当然なんだ……)
 そのあと、織姫はまったく無抵抗のままウルキオラに犯され続けた。
 もちろん、抵抗の意志があったところで無意味ではあっただろう。力づくで抑えこめる力がウルキオラの側にあるということではなく――織姫はその時にはもう、蛇の毒牙にかかった獲物のように、快楽で神経が麻痺していたからだ。
 最初の挿入の時、確かに悲鳴を上げたくなるような痛みはあった。
 けれど、それも長くは続かず――やがて最初の痛みが遠のいていくと、織姫は自分でも信じられないくらい淫らな声を洩らしていた。
「あっ……あん……ウルキ、オラさんっ!!あたし、あたし……っ!!」
 その時になってようやく何かの御褒美のように唇にキスをしてもらえた。今度は織姫も拒絶したりしなかった。むしろ自分もそれを求めていたというように、彼に呼吸をあわせて、何度もそれを繰り返す。
 織姫にその経験がなくても、ウルキオラとの行為が他の人間の男のそれとは明らかに<異質>であるということは、織姫にもわかっていた。
 全身を貫くような甘い痺れ……これは、ウルキオラの舌から何か人間の男にない特殊な物質が分泌されているからなのだろう。何か麻薬のような快楽物質に近いものだ。最初にそれが肌に侵入する時には、寒気に似たゾクリとした感触を味わうが、そのあとに訪れる快い陶酔感のことを思うと――そのゾクリとした感触を受け容れるのが癖になってくるのだ。
「あ……いいっ、いいッ!!もう駄目……っ!!おかしくなっちゃう!!!」
 何度も絶頂感を味わされ、もう恥かしいと思う感覚さえ、織姫の中では麻痺していた。
 そしてウルキオラがようやく自分の肉体を解放してくれたあとで――彼の翡翠色の瞳の中に、自分を軽蔑する表情がもし浮かんでいたらと思うと織姫は怖ろしかったが、ひとりの女を<堕落>させた後も、ウルキオラの態度は相変わらず元のものとほとんど変わりがなかった。
「後悔しても、もはや遅いぞ、女」と、ウルキオラは上着を身に着けながら言った。
「おまえはもう――他のただの人間の男では決して満足できまい。俺だけがおまえを満足させてやれる以上……井上織姫、おまえはこの檻の中から、自分の足で出ていこうとすら、もはや思わぬはずだ」
 織姫はすでに、体を動かすのが気怠いほどだったが、それでもなんとか上体を起こして言った。
「もう……いってしまうんですか?」
 まるで織姫が驚くべきことを口にしたとでもいうように、ウルキオラの翡翠色の瞳が彼女のほうへと動く。
「ああ。だが食事時にはまた戻ってくる。心配しなくてももう、おまえの体に例の症状はでなくなっているはずだ……あとは何かうまいものでも食べて、体力を回復させるんだな」
「……………」
 織姫はそれ以上、ウルキオラに対して何も言えなかった。今のこの状況下で、「好きです」といような言葉を口にするのはあまりに浅ましすぎる。けれどもう、自分はこの男の所有物にも等しい存在なのだと、織姫は自覚しないわけにはいかなった。
 ウルキオラは珍しくこの時――いつになく一度だけ女のほうを、部屋をでていく前に振り返っていた。
 たった今、自分が快楽の極みで堕落させてやった女……だが、織姫の顔はまるで聖女のような神聖さを宿したままだった。最初に織姫のことを見た時よりも、むしろ今のほうが清らかで美しいような印象さえ受けることに――ウルキオラは実際驚いていた。
 そして(まあ、いい)と彼は思う。
 自分の純潔を汚されたことに対して織姫が泣き言を言うような面倒な女であったとすれば……おそらくウルキオラは二度と織姫のことを抱く気にはなれなかっただろう。だが、織姫が無言のうちにも「いかないで欲しい」という眼差しをしていたことで――そばにいてやりたいと思う気持ちを、ウルキオラはあえて拒絶し、むしろ女の部屋からすぐにも出ていこうと思った。
 それは一体何故か?
 ウルキオラはその感情がなんと呼ばれるものなのかをまだ知らなかった。
 人間の間ではそういう感情の触れあいがあるらしいと聞いてはいたが――自分と女の関係にその名が相応しいとは彼にはとても思えなかった。だが、体の皮膚を通して織姫の肉体にだけでなく、自分のそれにも見えない何かが沁みこみつつあるのを、ウルキオラははっきりと感じていた。
(市丸ギン……あの男は本当に、俺以上に悪魔のような男だ)
 結局のところ、自分が井上織姫という人間の女のことを抱くだろうと、あの男にはわかっていたに違いない。
 ウルキオラはそう思った。
 もちろん中庭の泉で市丸ギンと出会ったのはただの偶然ではある……だが、それでも。
 次に会った時に彼が「織姫ちゃん、熱下がったんやって?よかったなァ」などと、思わせぶりに自分に聞いてくるであろうことが、ウルキオラにはよくわかっている。
 そして彼が自分たちアランカル、またホロウの宿敵である<死神>でよかったと、ウルキオラはこの時初めてそう思った。奴がもし自分と同じく「抗体」を持っていたとしたら――今ごろ井上織姫はあの男の毒牙にかかってどうなっていたかもわからないからだ。
(同じ悪魔でも、少なくとも俺はあの男よりはまだしもましだと言えるかもしれんな……)
 ウルキオラはそう思いつつ、一度自分の部屋へ戻ってから、次に閣議の間へと向かった。
 そしてその場所で藍染様から織姫の今の状態を聞かれ、熱も下がって症状のほうも安定しつつあるとウルキオラは答えていた。何しろ織姫がベッドに臥せってすでに十日以上にもなる――自分が何もせずとも自然と抗体ができていて、なんらおかしい時期ではなかった。
 ウルキオラはそれでも市丸ギンが何か口を挟むのではないかと彼のほうをちらと見やったが、主の傍らにいる市丸ギンは、どこか訳知り顔に微笑んでいるだけだった。
「ふうん。残念……僕がせっかく特効薬を開発してあげようと思ってたのにな」
 ザエルアポロがそう口を挟んでも、ウルキオラはあえて彼の発言を無視していた。
 議題はおもに侵入者があったことに対してであり、会議はあくまで淡々と進められたが――最後に閣議の間を去ろうという時、ウルキオラは主に左肩をぽんと叩かれていた。
「よくやった、ウルキオラ」
「……………?」
 最初は藍染様の言われていることが、ウルキオラには理解できなかった。だが、続く主の言葉によって、彼に隠し事をしておくことなどは到底不可能なのだと、ウルキオラは悟るに至る。
「女性には、優しくしてあげなさい。何より今の我々にとって、彼女は最上級の賓客なのだからね……織姫が自分の足でここまで来た以上は、彼女はすでに我らが同胞。侵入者どもにただで渡してやるような理由もない」
「はい、藍染様」
 主の意志を確認し、ウルキオラは自分が内心喜んでいるということに、気づかないわけにはいかなかった。
 今の藍染様のお言葉は、何より自分が井上織姫を自分のものとして飼っておいて構わないという承認に他ならなかったからだ。
(まさか藍染様は、こうなることを最初からご存知だったのだろうか?それで俺に井上織姫の世話を任せたというのか?……) 
 そう思いつつもやはり、ウルキオラの足は自然、女の部屋のほうへと向けられていた。
 行ってみると、井上織姫はすっかり病気の症状も抜け、清々しいような笑顔を自分に向けてきている。
 その瞬間に――ウルキオラにはわかってしまった。
 本当は侵入者があったことを彼女に伝えねばならないのに、そのことを話すのを何故自分がためらっているのかという理由について。
「ウルキオラさん、耳を貸してください」
 井上織姫といえば、無邪気にそんなことを言って、こんなことをウルキオラの耳に囁いてきた。
「病気を治してくださって、ありがとうございました……でも、あたし今度は別の病気になっちゃったんです」
 にゃはは、などと笑っている織姫につられて、ウルキオラも微かに笑いそうになってしまう。
「女、一体それはなんだ?俺に治療が可能ならば良いがな」
「えへへっ。むしろそれはウルキオラさんにしか治せない病気なんですっ。名づけて恋の病い、なーんて……」
 ウルキオラは、それ以上の言葉を織姫に禁じるように、彼女の唇にキスしていた。
「これで治ったか、女」
「……もしかしたらもっと、症状が重くなかったかも………」
 照れたように顔を赤くしている織姫のことを、ウルキオラは容赦なく押し倒していた。
 首筋に何度もキスを繰り返し、「これでどうだ?」とまた聞いてみるが、織姫は「ま、まだ治りません……っ」と、身悶えながらそう答える。
「そうか。ならば……」
 ウルキオラは織姫の足の間に自分のそれを挟み、彼女のタンクトップをまくりあげると織姫の大きな胸の先端に舌を這わせはじめた。
「あ……ああっ。ウルキオラさんっ……!!」
 それを待っていたというように、女がよい反応をする見て、ウルキオラもまた満足だった。
 そして井上織姫という人間の女のことを抱きながら彼はこう思う――侵入者があったということは、また明日にでも女に知らせればよいことだ、と。
 ただ今このひと時だけは、密のように甘い織姫の体に彼自身溺れていたかった。
<己>という存在を忘れるほどの情熱に身を任せて、やがて来るだろう終極の時のことなど――思考の外へ置いておきたかった。
 そう、せめて今はまだ、井上織姫という人間の女の瞳に、自分の姿だけが映っているところを、ウルキオラは見ていたかったのだ。



 終わり




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